靴紐の科学【化学・物理学的分析】

靴紐の科学【化学・物理学的分析】
ボウリングのギアは「ボール」と「シューズ」のふたつがメインである。「ボール」に注目されがちだが、「シューズ」についてもしっかり考えるべきである。
シューズの選び方は、既に紹介した。
→シューズの選び方
自分に合ったシューズを選んだあとは、シューズの性能を最大限に活用する。具体的には、靴紐をきちんと結ぶだけだ。しかし、この「靴紐」はとても奥が深い。
そこで「靴紐」について、可能な限りの情報を取りまとめた。
この情報を元に、私が個人的に推奨する「ボウリングシューズの靴紐の基本」は、以下の通りである。
- シューレース
- 平紐
- 綿(コットン)
- 上から下、最後は下から上(あれば、ダブルアイレットを使う)
まず最初に、靴の種類を復習しよう。
靴の種類

・ストラップ
バンドやベルトのようなストラップを使って、靴を留める。ベルクロ式のストラップが一般的で、履き脱ぎが簡単で調整もしやすい。ハウスシューズは、ほぼこのタイプである。
・シューレース
靴紐を靴の前部分の穴に通して結ぶことで、足にフィットさせる。
・ダイヤル
ダイヤル式は、ボアクロージャーシステムとも呼ばれ、特殊なダイヤルを使って靴を締め付ける。ダイヤルを回すことで紐が締まり、足にフィットさせる。
次は、シューレースとダイヤルで扱う、「紐の種類」について深掘りしていく。
紐の種類

丸紐
■メリット
①結びやすい:丸紐は平らな紐よりも結びやすい。結び目が緩みにくいため、靴をよりしっかりとフィットさせられる。
②耐久性が高い:丸紐は平らな紐よりも耐久性が高い。特に強い引っ張りに対しても強く、繊維がすぐに切れにくい。
③留めやすい:結び目がしっかりしているため、靴が足にしっかりフィットしやすく、調整がしやすい。
■デメリット
①解けやすい:丸紐は結び目が緩みにくいとはいえ、一度緩んでしまうと解けやすい。
②滑りやすい:表面が滑りやすい素材でできていると、結び目が緩んだり滑りやすくなる。またこの性質のため、特に細かい調整が必要な場合、取り扱いに手間がかかる。
③柔軟性が低い:丸紐はその名の通り、断面が円形または楕円形をしており、この形状は平らな紐に比べて曲げにくくなっている。また、滑らかな表面は紐が曲がりにくく、柔軟性を低下させる。
平紐
■メリット
①結びやすい
結びやすく、結び目が緩みにくい。靴がしっかりと固定され、結び目の再調整が少なくて済む。
②柔軟性が高い
一般に柔軟性が高く、曲げやすい。この柔軟性により、靴紐を通す際の操作性が向上し、靴を足にフィットさせやすくなる。
③スポーツに適している
平紐は多くのスポーツシューズに使われており、特に運動時の足首のサポートやフィット感が求められる場面で好まれる。
■デメリット
①耐久性の低下
平紐は幅が広いため、屈曲時に紐の表面に摩擦が生じやすく、耐久性の低下につながることがある。特に激しいスポーツやアクティビティでは、他のタイプの靴紐に比べて早く摩耗する。
②引っかかりやすい
表面が広く滑らかであるため、他の物体や障害物に引っかかりやすい。引っかかることで紐が引っ張られ、損傷が生じやすい。
平丸紐
平らな部分と丸い部分を組み合わせたハイブリッド靴紐。
■メリット
①結びやすさと結び目の安定性
平紐の一部が含まれているため、結びやすさがありつつも結び目が比較的安定しやすい。靴がしっかりと固定される。
②柔軟性と適度な硬さ
柔軟性がありつつも、平らな部分が含まれているため、一般の丸紐よりも適度な硬さがある。靴紐を通すときの操作性が向上し、足にフィットしやすくなる。
③耐久性向上
平紐の部分が含まれていることで、通常の丸紐よりも耐久性が向上する。
④スポーツ用途に適している
平丸紐はスポーツシューズやアクティブな靴に適しており、運動時の足首のサポートやフィット感が求められる場面で利用される。
■デメリット
①解けやすい
平丸紐でも結び目が解けやすい可能性がある。特に力がかかった場合、解けやすいことがある。
②中途半端な性能
丸紐と平紐、両方のデメリットが顕在化する可能性がある。
ワイヤー(ダイヤル)
■メリット
①簡単で迅速な調整
ダイヤルを回すだけで簡単に足のフィット感を調整できる。従来の靴紐よりも手軽に調整が可能。
②均等な圧力分布
ワイヤーが足に均等な圧力をかけるため、特定の部位への負担が軽減され、快適なフィット感が得られる。
③確実なフィット感
ダイヤルやボタンで微調整できるため、足に確実にフィットさせることができる。また、結び目が緩む心配が少ない。
④スポーツやアクティブな活動に適している
スポーツやアクティブな活動に適しており、安定性と快適性を提供する。
■デメリット
①修理が難しい
ワイヤーとダイヤルの構造が複雑で、故障した場合に修理が難しい。通常の靴紐よりも修理が手間取ったり、靴ごと買い換えが必要になったりする場合がある。
②価格が高い
通常の靴紐よりも価格が高い。
③一部の靴にしか適用できない
ワイヤー紐が採用されている製品に限定されるため、一部の靴にしか適用できない。
④重量が増加
ワイヤーとダイヤルが靴に追加の重量をもたらすことがある。軽量性が求められるランニングシューズなどには不向きな場合がある。
⑤耐久性に制限
ワイヤーもダイヤルも、特に高い耐久性を持っているとは限らない。一部の状況下での引っ張りやストレスに対して通常の靴紐よりも優れているとは言えない。
⑥全体的な複雑さ
構造が靴紐よりも複雑であるため、使い慣れるまで時間がかかる。また、正しい調整が必要であるため、初めて使う際には適切なフィット感を得られないことがある。
参考:寒冷地での使用に制限
寒冷地での使用に不向きで、凍結の可能性があるため、極寒の環境下では使用が制限されることがある。
エラスティック
■メリット
①簡単で速い装着
通常、結ぶ手間がないため、簡単で迅速な装着が可能。
②快適なフィット感
足にしっかりとフィットし、適切な圧力をかけることができる。これにより、快適で安定した感触が得られる。
③調整不要
一度調整すれば、そのまま維持されることが一般的で、再調整の必要が少ないため、手軽に利用できる
■デメリット
①個別の調整が難しい
従来の靴紐よりもフィット感を微調整することが難しい。
②適用範囲が限定される
一部のスポーツや特殊な活動には不向きであり、カジュアルな使用に適している。一部のスポーツシューズではサポート不足となることがある。
クイックレース
■メリット
①速い装着と調整
一度セットアップすると、靴をはくと同時に簡単に調整できる。速い装着とフィット感のカスタマイズが可能。
②結び目の心配なし
一度セットアップすれば、結び目が緩む心配がないため、安定感がある。
■デメリット
①引っ張ると緩む
クイックレース紐は一度引っ張ることで締まるが、誤って引っ張ることで緩んでしまうことがある。
②個別の調整が限られる
個別の調整が限られるため、足の形に完全に適合させることが難しい。
紐の種類を決めたら、紐の素材を考える。
紐の素材
綿(コットン)
■メリット
①柔らかく快適
柔らかく、しなやかなため、靴紐が足に優しくフィットし、快適な履き心地を提供する。
②通気性が良い
綿は通気性があり、空気を通しやすい特性がある。これにより、足に蒸れにくく、通気性が良い。
③手触りが良い
綿素材は一般的に手触りが良く、肌触りが柔らかいため、取り扱いがしやすい。
■デメリット
①水濡れに弱い
綿は吸水性が高いため、水に濡れると乾きにくくなる。雨天時や湿度の高い環境では注意が必要。
②耐久性が低い
綿素材は他の素材に比べて耐久性が低い。頻繁に使用する場合、特に摩擦や引っ張りに弱いことが考えられる。
③変形しやすい
湿気や水分に触れることで綿は変形しやすく、伸びやすい特性がある。長期間の使用や濡れた状態での保管に注意が必要。
④一部のアクティビティには不向き
スポーツやアウトドアアクティビティなど、高い耐久性が求められる場面には適していないことがある。
ポリエステル
■メリット
①耐久性が高い
強靭で耐久性がある。摩擦や引っ張りに対して強く、長持ちする。
②速乾性がある
速乾性があり、水分をすばやく放出する。濡れても比較的早く乾くため、湿度の高い環境でも適している。
③軽量で丈夫
軽量でありながら強度がある。足への負担を軽減しつつも耐久性を確保できる。
④抗菌性や防水性の追加処理が可能
一部のポリエステル素材の靴紐は、抗菌性や防水性の追加処理がされているため、清潔さや耐水性が向上する。
■デメリット
①柔軟性が低い
一般的には柔軟性が低い傾向がある。他の素材に比べてやや硬い場合がある。
②熱に弱い
ポリエステルは高温に弱いため、高温での使用や高温環境での保管には注意が必要。
③静電気が発生しやすい
一部のポリエステル素材は静電気が発生しやすいことがある。特に乾燥した環境での使用時に注意が必要。
④繊維が引っかかりやすい
ポリエステル素材は一部引っかかりやすいことがあり、細かい繊維が引っかかりやすくなる可能性がある。
ナイロン
■メリット
①耐久性が高い
非常に強靭で耐久性がある。長期間にわたって摩擦や引っ張りに強く、破れにくい特性がある。
②速乾性がある
速乾性が高いため、濡れても迅速に乾燥する。これは湿気の多い環境や雨天時に優れた特性である。
③軽量
軽量でありながら強度がある。足に負担をかけずに耐久性を確保できる。
④柔軟性があり扱いやすい
柔軟性があり、靴紐として簡単に結んだり調整したりすることができる。
⑤抗菌性や防水性の追加処理が可能
一部のナイロン素材の靴紐は、抗菌性や防水性の追加処理がなされている場合があり、清潔で耐水性が向上する。
■デメリット
①変色しやすい
一部のナイロン素材は日光や化学物質に敏感で、変色しやすい。
②静電気が発生しやすい
ナイロンは静電気が発生しやすい素材であるため、乾燥した環境での使用時に静電気が発生する可能性がある。
③熱に弱い
高温に弱いため、高温での使用や高温環境での保管には注意が必要。
④引っかかりやすい
一部のナイロン素材は引っかかりやすい傾向があり、他の表面に引っかかる可能性がある。
※ポリエステル素材とナイロン素材の違い
ポリエステルは耐久性と速乾性に優れているが、ナイロンは引っ張り強度が高く、吸湿性がある特性がある。一般的には、ナイロンはポリエステルよりも原材料が高価であるため、製品価格が高い。
ゴム
■メリット
①伸縮性が高い
非常に伸縮性が高く、足に合わせやすい。足の動きに追従しやすく、フィット感が向上する。
②速い装着
ゴム素材の靴紐は結ぶ必要がないため、簡単かつ速い装着が可能。
③調整が容易
伸縮性があるため、調整が容易。使い手が好みのフィット感に調整しやすい。
④耐久性がある
ゴム素材は一般的に耐久性が高く、摩擦や引っ張りに強いため、長期間の使用に耐える。
⑤水に強い
ゴム素材は防水性があり、水に強いため、雨天時や湿気の多い環境での使用に適している。
■デメリット
①通気性が低い
通気性が低いため、足が蒸れやすくなる。特に暑い季節や激しい運動時には通気性の欠如が不利になることがある。
②一部のスポーツには不向き
一部のスポーツやアクティビティには適さないことがある。特に、足のサポートが必要な場合には不向き。
弾性素材
■メリット
①簡単で速い装着
弾性素材の靴紐は通常、結ぶ手間がなく、伸縮性があるため、簡単で迅速な装着が可能。
②足にフィット
足の形によくフィットし、足の動きに合わせて伸縮するため、快適なフィット感が得られる。
③締め付け感を調整しやすい
伸縮性があり、適切な締め付け感を自由に調整できる。
■デメリット
①耐久性に制限がある
耐久性が通常の靴紐よりも劣ることがある。長期間の使用や激しい活動には不向き。
②一部のアクティビティに不向き
一部のスポーツや激しい運動には適さない場合がある。特に、高いサポートが求められる場合には不向き。
※ゴム素材と弾性素材の違い
ゴム素材は耐久性が高く、形状維持性に優れているが、弾性素材は伸縮性と柔軟性に優れている。
紐の種類と素材が決まったら、あとは紐を通すだけである。
紐の通し方・締め方
紐の通し方・締め方の基本は、このサイトで勉強させてもらった。
参考サイト:asics【スポーツシューズのシューレース(靴ヒモ)の通し方】
下から上(アンダーラップ)
■メリット
①締め付け感の調整がしやすい
靴紐を足に合わせて締め付け感を調整しやすい。足の形によりフィット感を微調整できる。
②足への圧力が分散される
足への圧力がより均等に分散されるため、快適な履き心地が得られる。
③特定のスポーツやアクティビティに適している
特にスポーツやアクティビティにおいて、瞬発的な動きに対応しやすい。
■デメリット
①緩みやすい
下から上に通すと、通常の通し方よりも緩みやすい場合がある。靴が安定しづらいこと可能性がある。
②足首部分への影響
足首部分に締め付け感が強くなりやすいため、足首の動きに影響を与える可能性がある。
上から下(オーバーラップ)
■メリット
①一般的な方法
多くの靴がこの通し方を前提としているため、一般的で使いやすい。
②安定感
通常の通し方は、靴を足にしっかりとフィットさせ、安定感がある傾向がある。足に密着することで、歩行時のサポートが向上する。
■デメリット
①締め付け感が強い場合がある
靴を締め付ける力が強く感じられることがあり、足へのプレッシャーが強い場合がある。
②調整の制限
締め付け感を細かく調整するのが難しい場合がある。
基本の締め方
■スポーツ用靴紐の基本的な締め方
①均等に締める
靴紐を均等に左右に締める。片方だけを強く締めると、足に不均等な圧力がかかり、快適なフィット感が得られない。
②上から下に均等に通す
靴紐を上から下に均等に通し、各穴に同じ長さが残るようにする。これにより、足全体に均等な締め付けが行われる。
③ダブルアイレット(2段ハトメ)を使う
ダブルアイレットを使用して、足の甲、足首部分を特にしっかりと固定する。足が細い、かかとの幅が細くシューズをフィットさせづらい場合に、有効な方法。ヒールロック効果がある。
④余分な長さを調整する
余分な靴紐がある場合は、適度な長さに調整し、余分な紐が邪魔にならないようにする。紐が引っかかったり、結び目がほつれたりするのを防ぐ。
■締め方の理由
①足全体に均等なサポート
靴紐を均等に締めることで、足全体に均等なサポートが得られる。特定の部分だけを強く締め付けると、その部分に余分な圧力がかかり、不快感やけがの原因となる。
②足首の動きへの適応
靴紐を適切に調整することで、足首の自然な動きに適応できる。これにより、スポーツの際に足首をサポートし、怪我を予防することができる。
③余分な紐の管理
靴紐が余分に長いと、不用意に引っかかったり、結び目がほつれたりする可能性がある。余分な紐を適切に管理することで、快適で安全な使用が可能。
ボウリングでは、競技中にも締め直すことができるのは、強みである。
靴紐はなぜ緩むのか
・使用頻度と摩擦
靴を履くときに靴紐が摩擦することで、靴紐が緩んでしまうことがある。頻繁に履いたり歩いたりすると、摩擦によって締まりが緩んでしまう。
・靴紐の素材
靴紐の素材によっても緩みやすさが異なる。柔らかく伸縮性のある素材の靴紐は、締まりが緩みやすい傾向がある。逆に、堅い素材や滑りにくい素材の靴紐は、比較的緩みにくい。
・靴紐の結び方
靴紐の結び方も緩みの要因になる。結び目が十分に固定されていない、または結び目が滑りやすい方法で結ばれている場合、緩みやすくなる。
・靴紐の端末
靴紐の端末が揺れると、結び目の不安定性が増す。また、摩擦が生じ、結び目が緩んだり滑りやすくなる。特に柔らかい素材の靴紐や滑りやすい素材の靴紐を使用している場合に影響が現れやすい。
・足の動きや体重の変化
歩行やランニングの際に足が動くことで、靴紐に引っ張りや圧力がかかる。また、体重の変化や足への衝撃も緩みの要因となる。
・靴の形状やサイズ
靴の形状やサイズが合っていない場合、足の動きや圧力が靴紐に影響を与え、緩みやすくなる。正確なフィッティングが重要である。
・湿気や汗
靴内部が湿気ったり、足からの汗が靴紐にかかると、靴紐や結び目が滑りやすくなり、緩みやすくなる。
靴紐が緩むのを防ぐために
・靴紐を十分に短く調整する
靴紐の端末を短く調整することで、揺れが少なくなる。ただし、短すぎると結びやすさに影響を与える可能性があるため、バランスを考慮しながら調整することが重要。
・靴紐の結び方を工夫する
結び目をしっかりと締め、余分な部分を適切に処理することで、結び目の不安定性を軽減できる。特に、ダブルアイレットなどのテクニックを取り入れることで、靴紐のゆるみを防ぐことができる。
・靴紐の端末を挟む
靴紐の端末を靴のタンや他の部分に挟んでおくことで、揺れを軽減することができる。
まとめ:靴紐の科学
ボウリングの重要なギアである「シューズ」の性能を、最大限に活用する方法をしっかり考えて欲しい。私が個人的に推奨する、ボウリングシューズの靴紐の基本は、以下の通りである。
- シューレース
- 平紐
- 綿(コットン)
- 上から下、最後は下から上(あれば、ダブルアイレットを使う)
靴紐について、可能な限りの情報を取りまとめた。他の種目の競技者の方にも、ひとつでも参考になれば幸いである。
おまけ:私が履いたボウリングシューズたち

- 【ABS】S-380 ホワイト・レッド
- 【ABS】NV-3 ホワイト・シルバー(廃番)
- 【ABS】NV-4 ホワイト・シルバー(廃番)

- 【ABS】NV-5 シルバー・ブルー(廃番)※画像はシルバー・シルバー
- 【ABS】ABS CLASSIC ホワイト・シルバー
- 【HI-SP】コアドロEVO ホワイト/ゴールド

- 【Dexter】THE 9・キャンバス・レディース(廃番)
- 【Dexter】Ds150・TPU ブラック
- 【HAMMER】プロフレックス フュージョン2021(廃番)
※これからも、まだ、いろいろ試してみる予定である。