ITストラテジスト試験を終えて【6度目の敗退】

ITストラテジスト試験を終えて【6度目の敗退】
今年もまた、ITストラテジスト試験の合格発表日がやってきました。そして結果は「不合格」。これで、挑戦6回目にして6度目の敗退となります。不合格の落ち込みは何度受けてもあるものですが、ここまできたら逆に「何が足りないのか」「そもそも自分はなぜこの試験を受け続けているのか」を見つめ直す良い機会と捉えることにしました。
今回は、「点数」「試験制度」「そして自分の学びの姿勢」という3つの視点から、今回の受験を振り返ってみたいと思います。
点数:絶対評価と相対評価
資格試験には「絶対評価」と「相対評価」が存在します。ITストラテジスト試験は、経済産業省所管の情報処理技術者試験の一つで、情報処理技術者試験の高度試験に区分されています。この高度試験は、午前科目は「絶対評価」であり、午後科目は「相対評価」の側面が強いのが特徴です。
具体的には、午前科目はマークシート方式での試験であり、合格基準点の60点を超えることができれば、受験者全員が合格することができます。これが「絶対評価」と呼ばれるものです。
しかし、午後の記述式や論述式では、試験全体の難易度や受験者の出来に応じて合否が調整、例えば配点調整などがなされます。これが「相対評価」です。実はこの相対評価、資格試験における合格率を見れば、おのずとわかるものです。試験回の合格率にばらつきが多いものは絶対評価、いつでも一定の合格率に収められているものは相対評価、であることが多いのです。
他の資格試験で言えば:
- 傾斜配点(底上げ方式):日商簿記1級では、特定の難問が多い回には点数が調整されることがあります。
- 合格ラインの変更:宅建(宅地建物取引士)では、その年の合格率に応じて合格点が動くことがあります。
- 競争試験(上位〇%が合格):ITストラテジストを含む高度試験区分では「上位○%」が合格する仕組みになっているという声もあり、実力だけでなく“運”や“波”も重要になります。
つまり、「60点を目指せばいい」という話ではなく、「受験者全体の中でどの位置にいるか」が問われる試験だと言えるでしょう。
試験制度の変遷と見直しの流れ
2025年6月4日、日経クロステックに掲載された記事によれば、情報処理技術者試験は制度改革の検討段階にあるとのことです。
具体的には:
- データ管理やビジネスデザインを担う「データマネジメント」「デザインマネジメント」のスキルを対象とした試験の新設
- 2025年内にもシラバス(試験の概要)を作成
この制度変革の目的は、生成AI(人工知能)など技術の進化に合わせたデジタル人材像を定義し、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)をより強力に推進する人材育成体系の確立を目指すことになるようです。
これまでの過去の制度の流れを簡単に振り返ると:
- 平成13年(2001年)〜:職業能力評価の強化を背景に、スキル標準との連携が進みました。
- 平成21年(2009年)〜:現行の高度区分が新設され、ITストラテジストなどがこの時に登場しました。
- 平成29年(2017年)〜:デジタル時代を意識し、実務対応力の評価に軸足を移す動きになりました。
時代の変化に伴い、試験内容や評価方法も変化しているのです。今後さらに、「知識偏重ではなく実務力評価へ」という傾向が強まるかもしれません。すなわち、単なる暗記や試験対策だけでは通用しなくなる可能性があります。
自分は何を学び、何を身に着けたいのか?
そもそも、なぜ私はITストラテジスト試験に何度も挑戦しているのか。もちろん「とにかく合格したい!」という気持ちはあります。でも本質的には、「資格試験を通じて学ぶ習慣を身につけたい」「知識のアップデート(ブラッシュアップ)をし続けたい」という想いが根底にあるのです。
資格試験の良いところは、「学習のきっかけ」が明確になる点です。毎年の試験日が目標となり、スケジュールを立てやすくなります。さらに、試験範囲という“枠”があるおかげで、効率よく知識の整理ができます。
特に社会人になると、「新しいことを学ぶのが面倒だ」と感じてしまうことがあります。しかし、資格試験をうまく活用すれば、その忌避感を乗り越える助けになるのです。
まとめ:ITストラテジスト試験を終えて【6度目の敗退】

6回も不合格が続けば、多くの人は心が折れてしまうかもしれません。そして今、2027年に予定されている試験制度の改革によって、ITストラテジスト試験そのものが大きく変わる可能性もあります。もしかすると、これまで積み重ねてきた知識や経験がそのままでは通用しなくなったり、試験の意義そのものが変わったりするかもしれません。かつて「初級アドミニストレータ試験」が廃止され、「ITパスポート試験」に切り替わったときのように、です。
それでも、私はまだ諦めていません。なぜならば、合格すること以上に大切なのは、「自分が何を学び、それをどう活かすか」だと考えているからです。
この試験を通じて、私は自分の学び方や考え方のクセ、そして社会や技術への視点を見つめ直すことができました。これは、合否の結果では見えにくいけれど、確かな、そして静かな成長だと信じています。 次回の試験が、今の制度で受けられる“最後のチャンス”になるかもしれません。それでも私は、今回の6度目の敗退を「失敗」ではなく、「学びの通過点」としてしっかりと記録に残し、前を向いていきたいと思います。