IT高度試験の論文基礎
IT高度試験の論文基礎
情報処理技術者試験の高度試験では、「論文」を書かなければならない試験区分が6つあります(2024年1月現在)。
- ITストラテジスト
- システムアーキテクト
- プロジェクトマネージャ
- エンベデッドスペシャリスト(2023年、記述式から論述式に変更)
- ITサービスマネージャ
- システム監査技術者
手書きで書くことから遠ざかっていませんか。SNS上での新しい文章の書き方(ネット文章の書き方)に慣れてしまっていませんか。原稿用紙の使い方をきちんと覚えていますか。
私も手書きで書くことは少なくなっていますし、ネット文章の書き方で文章を書くことが多くなっています。試験勉強の都度、「原稿用紙の使い方は間違えていないか」と確認しています。
せっかくなので、調べた論文の基礎を記録しておきます。同じ高度試験で論文に臨むみなさまの、参考にしていただけると嬉しいです。
- 論文の基礎
- 原稿用紙の使い方
- 情報処理技術者試験での論述
参考資料は、こちらの2冊です。
(Amazon)小論文これだけ!今さら聞けないウルトラ超基礎編
(Amazon)情報処理教科書 高度試験午後Ⅱ論述
論文の基礎
①常体(「だ・である」調)を使う
常体は、公的な文章を書くときに使用する。論文、小論文は公的な文章であるため、常体を使う。
②句読点をつける
一文が終わったら、句点をつける。一般的に好ましいとされている、①主語のあと、②接続助詞のあと、③接続詞のあと、④名詞などの列挙、で読点をつける。
③主語と述語を対応させる(明確にする)
文を書く基本であり、重視される点である。主語と述語がかみ合わないと、日本語として通じない文になってしまう。
④主語や目的語を書く
「誰が」「何を」「どうした」をきちんと示す。こうすることで、わかりやすい文にすることができる。
⑤一文を短くする
1つの文で1つの意味・内容を書くようにする。また、一文が長いほど、主語と述語がかみ合わなくなる原因となる。
⑥書き言葉(文語体)を使う
「ら」抜き言葉、「い」抜き言葉、「だ」抜き言葉、余分な「さ」「せ」、不適切な「ん」に注意する。文学的表現である、倒置、体言(名詞)止め、比喩表現、会話体などの使用を避ける。
⑦常用漢字を使う
漢字や送り仮名の誤り、漢字で書くべき文字の平仮名表記は、減点対象と心得る。逆に、意味なく漢字を使うのも好ましくないので注意する。
⑧同じ言葉や同じ表現が繰り返されても良い
小論文の場合は同じ意味であれば同じ言葉を使うのが原則である。文章全体で表記を統一させる。
例:関係部署、関連部門、関係部門、関連部署など
⑨言葉のかかり方に注意する
例:「たり」は動詞を二語以上並列する、「全然」や「全く」のあとは否定の「ない」、など
⑩重複表現、二重否定は使わない
例:「未だに未解決」→「未解決」、「問題がないことはない」→「問題がある」、など
⑪固有名詞はイニシャル表記を用いる
例:「Google社」→「A社」、「田中課長」→「B課長」、など
⑫商標名は一般的な名称を用いる
例:「iPhone」→「スマートフォン」、「LINE」「Facebook」など→「SNS」、など
原稿用紙の使い方
①段落の書き出しは1字下げる
一文字目と段落を変えるときは改行し、1文字下げて書き出す。
②原稿用紙のマス目を勝手にあけない
行あけもしてはならない。文字数稼ぎは厳禁である。
③句読点、かっこなどは1字として数える
句読点「、」「。」、かっこ「()」、かぎかっこ「「」」などは、それぞれを1字とする。ただし、行頭に句読点と閉じかぎを置いてはいけない。
原則として、かっこ記号は一重かぎかっこ「「」」と、二重かぎかっこ「『』」のみを使用する。二重かぎかっこは本のタイトル、グラフや図表などの引用を行うときにのみ使用する。
④句点と閉じかぎは、1マスの中に書く
句点(。)や閉じかぎ(」)を用いる場合は、1つのマスの中に一緒に書く(。」)。もしくは、句点を省略する(」)。ただし、文章全体で表記を統一させる。
⑤句読点はマス目の左下に書く(横書き原稿用紙)
中点(・)と混同されないよう、位置に気を付ける。
⑥くり返し記号「々」は行頭に置かない
記号だと思っていない人が稀にいるが、「々」は記号である。よって、行頭に置くことはできない。
⑦タイトルのセンタリングをしない
インデントのために、空白マス目を作らない。
⑧数字は半角算用数字、英大文字は全角、英小文字は半角【横書き原稿用紙】
漢数字で書いても良いが、文章全体で表記を統一させる。ただし、慣用句や熟語などの漢数字は、漢字のまま表記する。
※情報処理技術者試験では算用数字の方が、書きやすいと思われる。
⑨横書きのときは、ダブルクオーテーションが許される【横書き原稿用紙】
本来の論文試験では「!」「?」「“」「~」「…」などの記号類は使用しない。特殊記号「《》」「#」なども使用しない。
情報処理技術者試験での論述
①「最初に、次に、最後に」「第一に、第二に、第三に」などを使う
「あとに」「それに」「ほかに」など、曖昧な表現を避ける。時系列に沿って論じる場合は、特に注意して表現する。
②字数は必ず守る
設問ア800字(以内)、設問イ800字、設問ウ600字が規定字数とされており、設問ごとに規定字数をクリアする。規定字数に達していない場合は、不合格を覚悟しておく。全体としては、約8割にあたる2,800字を目標とする。
③問題文に応える
問題文の主旨を正確に読み取り、問題文に応えた形で論述をしていく。また、問題文そのままで模写や引用をするのではなく、問題文の内容を読み取ったことを書き、具体的に展開していく。
採点・評価は、設問の答えに対してのみ行われる。
④採点・評価してもらうために、わかりやすく書く
適切に説明を加える。用語の意味を理解し、使っていることを示す。抽象的な表現のあとは、具体的に述べる。5W1H、結論先行型の文章を書く。
⑤データは事前に調べておく
質問票と設問アは、情報収集し、事前準備したもの勝ちである。しかもいくらでも時間をかけて作っておくことが許されている。しっかり情報収集を行い、事前準備を万全にしておく。
⑥6割が合格ライン
集計方法の詳細が未公開ではあるが、減点法ではないかと言われている。論文を自己採点・評価する場合は、減点ポイントはないか、減点ポイントでどのような減点をされる可能性があるのか、という観点で行いたい。
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私が論文で気をつけていること【時間短縮効果】
タイムスケジュールを作っておく
- 問題文の理解、問題選択、質問票の記入、論文の構成(10分間)
- 設問ア(25分間)
- 設問イ(45分間)
- 設問ウ(30分間)
- 全体の見直し、記入漏れなどの確認(10分間)
これは私が使っている、タイムスケジュールです。もちろん、論文の書き方などもそれぞれ違うので、自分に合ったタイムスケジュールを準備しておきましょう。この時間内に書き上げる意識と、時間で区切りをつけて、次の設問に移る勇気が必要です。
「事」「時」「為」より「こと」「とき」「ため」で整える
- 私が考えたことは…
- 私が実施したときに…
- ○○だったため…
「常用漢字を使う」に関連したお話です。「論文として、常体で記述せよ」と言われると、この「事」「時」「為」を無理に書こうとする人がいます。本来であれば漢字と平仮名の使い分けをするべきですが、高度試験では厳密な国語力を求められていません。
私は「事」「時」「為」や「等(など)」などは、敢えて平仮名で書きます。理由は単純明快で、漢字で書くより早くて疲れないから、です。2時間近くも手書きで文字を書き続けるのですから、できるだけ負担は少ない方が良いでしょう。また、平仮名による減点や論旨の誤りなども、この単語ではほぼ起こらないでしょう。
漢字で書いていた方は、ぜひ一度、平仮名で書いてみてください。
「費用」より「コスト」、「(以下○○とする)」、などを使う
上記と同様に、漢字をカタカナ語や略語にします。通常の論文では、カタカナ語やアルファベット略称などは良くない表記とされますが、高度試験は別です。参考書や過去問題に使われていた表記は、遠慮なく使っていきましょう。
私が最も良く使うのは「費用」を「コスト」、「〇〇△△××システム(以下、新システムとする)」のパターンです。終盤の設問ウで力尽きないためにも、書くのに時間がかかる漢字はカタカナ、長くなる名称は略称、をあらかじめ決めておくと便利です。
余談ですが、「ユーザー」もしくは「ユーザ」、「営業部署」もしくは「営業部門」などもあらかじめ決めておくと、文章全体で表記を統一させるのに役立ちます。
注意点としては、問題文内に同じような単語があった場合は、問題文に応えて問題文の単語を使うことです。
項番の付け方
参考論文や参考書などでは「第一章 〇〇」や「第1 〇〇」とタイトル付けを行っているものがありますが、そんなにかっこいい項番は必要ありません。会社やクライアントとのやり取りでは、会社のルールやクライアントの意向に沿って文書(項番)を作成しますが、それらに絶対的なルールがあるわけではありません。
公式な項番のルールで、文化庁から示されているものがあります。
(横書きの場合) 第1 1 (1) ア (ア)
第2 2 (2) イ (イ)
第3 3 (3) ウ (ウ)
この表記も「例として」と書かれているため、私はこれをアレンジして使っています。
(高度試験の場合) 1 (1) ア (ア)
2 (2) イ (イ)
3 (3) ウ (ウ)
画数が少なくて、すっきりです。「1.」「(1)」「ア.」「(ア)」と書けば、自動的に項番でインデントができます。また、「(ア)」より下の階層が必要になった場合は「a.」「(a)」を使います。
こちらも、漢字で書いていた方は、ぜひ一度、試してみて欲しいです。
文字数を減らすか、スタイリッシュに文字数を増やすか
問題文や論述内容によっては、適用できない場合もありますが、書き換えを考えておきたい単語があります。
- 「顧客」か「クライアント」か
- 「納期」か「デッドライン」か
- 「時間管理」か「タイムマネジメント」か
他にもいろいろ思い当たる単語があると思います。応用できる単語もあるでしょう。2,800字が厳しそうな課題を与えられたときは、私は思いつく限り書き換えて、文字数を増やします。試験前のお時間のあるときに、書き換え可能な単語を増やしてストックしてみてはいかがでしょう。
まとめ:IT高度試験の論文基礎
- 論文の基礎
- 原稿用紙の使い方
- 情報処理技術者試験での論述
調べた論文の基礎の記録です。同じ高度試験で論文に臨むみなさまの、参考にしていただけると嬉しいです。
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【公式な項番ルール】
→文化庁:新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)