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建設業計理士を受験してみた【第36回】

mitsuki
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建設業計理士を受験してみた【第36回】

ご縁があって、建設業界の仕事を請け負うこととなり、せっかくなので、この機会を活かして建設業計理士2級を受験してみることにしました。

【詳しくはこちら】
→建設業計理士を受験してみることにした

令和7年3月9日に行われた第36回試験に挑戦してきたので、ご報告させていただきますね。これからの受験を考えているみなさんの参考になれば嬉しいです。

  • 前提条件
  • 使った参考書と勉強時間
  • テスト当日の話

前提条件

まず私の状況を明確にしておきます。私はすでに日商簿記2級に合格しています。

【詳しくはこちら】
→簿記3級・2級を受検して返り討ちにされた話

このため、建設業計理士試験で扱う論点のほとんどは基礎知識として身に付けていた状態での受験となりました。基本的な簿記の知識をすでに持っていたことで、勉強時間の多くを建設業特有の論点に集中させることができたため、私にとっての受験難易度はかなり低く感じました。

もし簿記3級も2級も持っていない方が挑戦する場合は、かなり基礎勉強の時間が必要になるでしょう。少なくとも簿記3級レベルの知識を身につけた後の挑戦をおすすめします。

なぜならば、建設業計理士の参考書だけでは簿記の基礎知識を効率よく学ぶには情報が不足しているからです。基礎から学ぶなら、まず日商簿記の学習教材で基本を固めてから建設業計理士の勉強に移行する方が、はるかに効率的でしょう。

使った参考書と勉強時間

使った参考書はこちらです。
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勉強内容の内訳はこちらです。

① 参考書:約10時間
② 過去問題:全12回を3周(約60時間)
 ・1周目:1回あたり120分
 ・2周目:1回あたり90分
 ・3周目:1回あたり60分を目標に取り組みました

当初は150時間程度の勉強時間を想定していましたが、過去問を繰り返すうちに解くスピードが上がり、最終的には約70時間程度の学習で十分だと感じました。

過去に簿記2級でかなりコテンパンにやられた経験があったため、今回は心配性になって多めに時間を確保していたのです。結果として、思ったよりも短時間で効率よく準備ができました。

特に効果的だった勉強方法は、間違えた問題について「なぜ間違えたのか」という解答プロセスを含めて徹底的に復習したことです。単に正解を覚えるのではなく、どうして誤った思考に至ったのかを分析し、理解を深めました。

テスト当日の話

① 試験会場の様子

試験当日は他の資格試験と同様に、開始1時間前には会場に到着しました。入室は前の科目が終わるまでできないため、待合スペースで待機することになります。

ここで私が驚いたのは、待合時間の過ごし方です。私はさまざまな資格試験を受けてきましたが、通常、試験直前のこの時間は参考書を読んだり簡単な復習をしたりする方がほとんどです。ところが、建設業計理士の試験では、なんと直前まで過去問題を開いて模擬問題を解いている受験者が多数いたのです!最初は私の気のせいかと思いましたが、ひとりやふたりではなく、かなりの人数がそうしていました。さらに驚いたことに、試験会場の教室に入ってからも過去問を解き続けている方もいました。

合格率が40~50%程度であることを考えると、準備不足の受験者が相当数いるのではないかと感じました。過去問の最終チェックは試験直前ではなく、前日までに済ませておくべきでしょう。

② 試験問題と解答時間

幸いなことに、今回の試験問題は難易度が高く感じるものではありませんでした。特に計算に時間がかかる問題や複雑な思考を要する捻った問題の出題もなかったと思います。

私はこうした資格試験では「試験時間の半分で解き終える」ことを目標にしています。理由は単純で、合格基準が7割程度であることを考えると、制限時間ぎりぎりまで解き続けなければならないということは、理解が不十分であることの表れだからです。

事前に過去問を3周目で60分以内に解き終えることを目標に練習していたため、本番でも70分ほどですべての問題を解き終えることができました。残りの時間は丁寧な見直しに充てました。

③ 試験時間での驚き

試験中に最も驚いたのは、電卓を叩く音の多さです。問1の仕訳問題から、カタカタトトトト、ドドドドと、会場中に電卓の音が響き渡っていました。

正直なところ、今回の試験内容であれば、そこまで電卓に頼る必要はなかったと思います。どの問も、複雑な計算を要する問題ではありませんでした。

電卓使用で気をつけるべきポイントは、「できるだけ電卓の機能を使うこと」と「できるだけ電卓を使わないこと」です。一見矛盾しているように聞こえますが、建設業計理士では扱う桁数が多く、計算対象も多いため、電卓をたくさん使うほどミス率が上がります。電卓の機能(メモリーなど)を活用し、叩く回数を減らすことがミスを減らし、効率的に問題を解くコツなのです。

私の会場では着席率は約70%で、欠席者もかなりいました。これは他の試験と比べて特に変わった点ではありません。ただ、もう一点驚いたのは退室の状況です。他の試験では、退室可能時間になると必ず何人かが退室します(おそらく諦めた方も含まれます)。しかし今回は、退出者が全くおらず、私が試験時間の90分程度経過後に退室したのが、最初の退出者となりました。

合格率の高さを考えると、この現象はとても不思議に感じました。おそらく、最後まで丁寧に見直しをしている方が多かったのでしょう。あるいは、過去問題を十分に練習していない方が多く、制限時間ぎりぎりまで解答に取り組んでいた可能性もあります。

建設業計理士2級の試験は、日商簿記2級の知識があれば、建設業特有の論点を集中的に学習することで、十分に対応可能な内容でした。過去問を繰り返し解くことで効率的に実力を養成できますが、会場の様子を見る限り、十分な準備をせずに受験している方も少なくないようです。

簿記の基礎知識があれば比較的取得しやすい資格ですが、やはり計画的な学習と過去問演習が合格への近道となるでしょう。

勉強中に感じた、あれこれ

建設業計理士の勉強を進めていく中で、「なぜこんなことを覚えなければならないのか?」「これって実務でどう活きるの?」と思うことが何度もありました。日商簿記と異なる部分や、特に印象に残った内容について、私なりの理解と気づきをまとめてみました。

① 出題頻度が高い『資本金勘定』に関すること

建設業計理士の試験では、『資本金』に関する問題が頻出します。特に、「配当金額の10分の1を利益準備金として積み立て、利益準備金が資本金の4分の1に達するまで積立を継続する」という規定について何度も問われました。

理由:なぜこんなにしつこいのか?

これには建設業界の特性が関係しています。建設業は、工事の受注から完成までの期間が長く、資金繰りが重要な業種です。また、公共工事の入札には経営事項審査(経審)が必要で、自己資本比率や純資産額が評価対象となります。

つまり、建設会社にとって資本金や準備金の管理は、安定した経営基盤を示すために極めて重要なのです。資本金や法定準備金の考え方をしっかり理解することは、建設業の財務管理の基本と言えるでしょう。

利益準備金を資本金の4分の1まで積み立てる規定は、会社法に基づくものですが、建設業では特に財務健全性の証明として重視されています。「配当金額の10分の1を積み立て」「利益準備金が資本金の4分の1に達するまで」というルールは何度も出題されるので、必ず覚えておきましょう。

② 簿記2級と比べると出題頻度が高めの『本支店勘定』

本支店会計の問題も頻出で、最初は「なぜこんなに詳しく学ぶ必要があるのか」と疑問に思いました。

理由:建設業での本支店会計の重要性

建設業は、工事現場ごとに「現場事務所」という一時的な拠点を設けることが多く、これが会計上は「支店」のような扱いになります。各工事現場での収支管理と本社の会計を統合する必要があるため、本支店会計の知識が不可欠なのです。

また、実際の建設会社では地域ごとに支店を設けていることも多く、支店間の取引や精算も日常的に発生します。本支店勘定を理解することは、建設業の組織構造や資金の流れを把握する上で欠かせない知識なのです。

③ 出題頻度が高い『銀行勘定調整』

銀行勘定調整表の問題は、最初は複雑に感じましたが、実務での重要性を理解すると納得できました。

理由:なぜ頻出されるのか?

建設業では、多額の資金移動が日常的に発生します。工事の前払金、材料費の支払い、下請業者への支払いなど、銀行取引が頻繁です。そのため、自社の帳簿と銀行記録の違いを正確に把握し、調整することが重要になります。

特に月末の決算時には、自社の現金預金残高と銀行残高の不一致が問題になりがちです。この差異を適切に説明し、調整する能力は、会計担当者として必須のスキルなのです。

④ 精算表の「処理済み」の意味

精算表の問題で頻出する「処理済み」という表現は、最初はかなり混乱しました。

解説:「処理済み」とは何か?

精算表において「処理済み」とは、すでに仕訳が行われ、勘定科目に反映済みであることを意味します。つまり、再度調整する必要がない項目です。

この概念が特に重要になるのが、決算整理事項の処理です。例えば、減価償却費が「処理済み」と記載されていれば、その金額はすでに固定資産の帳簿価額から減額され、減価償却費として計上されているということです。

建設業では、工事の進行度に応じた収益・費用の計上や、多数の固定資産の管理など、決算時の調整事項が多いため、何が処理済みで何がまだ未処理なのかを正確に把握することが重要です。問題文をしっかり読み、「処理済み」と明記されている項目には二重に調整を行わないことが大切です。

⑤ のれんの償却期間は、5年なのか20年なのか?

のれんの償却期間について、5年と20年の両方が出題されることに疑問を感じました。

解説:なぜ2つの基準があるのか?

これは、会計基準と税法の違いによるものです。企業会計上は、のれんの償却期間は20年以内とされており、実務では多くの企業が5年〜20年の範囲で設定しています。一方、税法上ののれんの償却期間は一律5年と定められています。

建設業計理士試験では、この両方の基準について理解していることが求められます。建設業界では企業の合併や買収も少なくないため、のれんの会計処理に関する知識は実務でも重要です。

まず「会計上の処理」か「税務上の処理」かを確認し、それに応じた償却期間を適用することがポイントです。

⑥ 仕入割引と売上割引の見極め方

仕入割引と売上割引は名前が似ているため、混同しやすいポイントでした。

解説:見極めるコツ

仕入割引:仕入債務の早期支払いによって得られる値引き(自社にとっての収益)。建設業では主に未成工事に関連。

売上割引:売上債権の早期回収のために提供する値引き(自社にとっての費用)。建設業では主に完成工事に関連。

建設業計理士試験での重要なポイントは、仕入割引は「未成工事」に関する取引、売上割引は「完成工事」に関する取引に紐づけて考えることです。つまり、資材調達や下請け業者への支払いに関する割引は仕入割引として「未成工事支出金」に関連し、工事の引き渡し後の債権回収に関する割引は売上割引として「完成工事高」に関連します。

仕訳を判断する際は、その取引が未成工事関連か完成工事関連かを見極めることが重要です。未成工事関連の割引なら仕入割引、完成工事関連の割引なら売上割引と考えると分かりやすいでしょう。

覚え方としては、「自社にとってプラスかマイナスか」という視点に加え、「工事の進行段階」も考慮すると理解しやすくなります。仕入割引は工事進行中(未成)、売上割引は工事完成後の取引と関連づけましょう。

⑦ 『前払』『先払』そして『未払』

特に「前払」「先払」「未払」は混同しやすい概念です。

⓵前払(前払金、前払費用など)

「前払」とは、サービスや商品を受け取る前に代金を支払うことを指します。つまり、まだ受け取っていない将来の便益に対する支払いです。

【例】

前払保険料:1年分の保険料を期首に一括払いした場合
前払家賃:来月分の家賃を今月のうちに支払った場合
工事前払金:工事開始前に発注者から受け取る前払金

会計上、前払金は資産(前払費用)として計上され、サービスや商品を受け取るタイミングで費用に振り替えられます。

⓶先払(先払金など)

「先払」は、「前払」とほぼ同じ意味で使われますが、建設業簿記では特に材料や商品の仕入れに関して使われることが多いです。

【例】

材料の先払い:材料を受け取る前に支払いを行った場合
下請業者への先払い:工事着手前に一部代金を先に支払った場合

会計上の処理は「前払」と同様で、資産として計上されます。

⓷ 前払と先払の違い

実務上、両者の明確な区別はあまりなく、同義語として扱われることも多いですが、建設業計理士試験では以下のような微妙な違いがあることもあります:

前払:主に期間に関連するサービス(保険、家賃など)や長期的な契約に対する支払い
先払:主に物品の購入や個別の取引に対する支払い

⓸未払との関係

「未払」(未払金、未払費用など)は、「前払」「先払」とは逆の概念です。サービスや商品をすでに受け取ったにもかかわらず、まだ代金を支払っていない状態を指します。

【例】

未払給料:従業員の労働に対してまだ支払っていない給料
工事未払金:すでに完了した工事部分や納入された資材に対してまだ支払っていない金額
未払水道光熱費:すでに使用したサービスに対してまだ支払っていない料金

会計上、未払金は負債として計上されます。

⓹前払・先払と未払の関係性

これらの概念は、支払いのタイミングとサービス・商品の受け取りタイミングの関係で整理できます。

前払・先払:支払い → サービス・商品の受け取り(資産)
通常取引:サービス・商品の受け取り → 支払い
未払:サービス・商品の受け取り → 未支払(負債)

建設業計理士試験では、これらの概念を正しく理解し、適切な勘定科目を選択する能力が問われます。特に建設業では工期が長期にわたることが多く、前払金や未払金の管理が財務状態の把握に重要な役割を果たします。

試験対策としては、取引の内容から「お金の動き」と「モノやサービスの動き」の時間的前後関係を整理し、適切な勘定科目を選択する練習が効果的です。

特に、問5の修正仕訳を行う際に、勘定科目をしっかり選んでいく必要があります。

簿記勉強、あるある

建設業計理士の勉強中に遭遇した「簿記あるある」をいくつか紹介します。

① 問題を読み飛ばしてしまう事案

慣れてくると、問題文をしっかり読み込まずに、計算をはじめてしまいがちです。条件の一部を見落としてしまうと、全く違う答えが出てしまいます。また、問題作成者側(出題者)も、それ(間違うこと)を見越して問題を作成しているので、しっかり計算ができてしまう問題が多数あります(きちんと割り算で割り切れる、端数がでない、など)。例えば、「消費税は考慮しない」という注釈を見逃して税込計算をしてしまったり、「間接法で計算せよ」という指示を見落として直接法で解いてしまったりと、細かい指示の見落としが命取りになります。

対策:問題文を読み終えたら、もう一度重要な条件をチェックする習慣をつけましょう。私は、問題文を指でなぞりながら、計算した過程をチェックしていく方式を採用しています。

② 詰めの甘さが命取り

計算の途中までは合っているのに、最後の仕上げで間違えてしまうケースがあります。例えば、減価償却費を計算した後、その金額を仕訳に反映させ忘れたりするくらいなら良いのですが、A工事の原価を問われていたのに、B工事を計算してしまっていたりすることもありました。

対策:解答を書き終えたら、「この問題で何を問われているのか」を再確認し、その要素が解答に含まれているかチェックする習慣をつけましょう。

③ 桁ズレ・段ズレの罠

建設業計理士は、桁数の多い計算が多くなります。電卓に打ち込む際、一桁多かったり、少なかったりすると、当然最後の答えは誤りに導かれます。

また、仕訳問題や精算表で、一つの項目が段ズレすると、以降すべての項目がズレてしまい、全体が不正解になることがあります。これは、時間に追われている試験本番では起こりやすいミスです。

対策:枠線のある解答用紙では、各項目が正しい枠内に収まっているか確認しましょう。また、合計額の検算を行うことで、段ズレに気づくこともできます。

④ 勘定科目の微妙な違いを見逃す

「工事未払金」と「未払金」、「完成工事未収入金」と「未収金」など、建設業特有の勘定科目と一般的な勘定科目の使い分けがあります。先程、仕入れ割引、売り上げ割引、前払と先払いについては解説しましたが、建設業計理士試験では、この区別が重要視されます。

対策:建設業特有の勘定科目をリストアップし、それぞれがどのような取引で使われるのかを理解しておくことが大切です。特に、工事関連の取引と一般管理関連の取引での勘定科目の違いに注意しましょう。

建設業計理士の勉強は、単なる簿記の知識だけでなく、建設業特有の会計処理や考え方を学ぶ貴重な機会でした。最初は「なぜこんなことを覚えるのか」と思った内容も、建設業の特性を理解するにつれて、その重要性が見えてきました。

また、これらをしっかり理解することで、建設業の会計実務に強くなれると感じています。

簿記あるあるの失敗談を、試験のみならず、今後の業務に活かしてもらえるととてもうれしいです。

まとめ:建設業計理士を受験してみた【第36回】

建設業計理士2級の試験は、日商簿記の知識をベースに建設業特有の会計処理を学ぶことで十分対応可能です。試験当日の観察から、準備不足の受験者も多く見受けられましたが、基礎知識をしっかり固め、計画的に学習すれば決して難しい資格ではありません。 建設業界での仕事に関わる方は、この資格取得を通じて業界特有の会計知識を身につけることで、業務の幅を広げるチャンスになるでしょう。

心から応援しております!

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満稀(みつき)
満稀(みつき)
大人だからこそ効率的に勉強したい運営者
社会人スタートはブラック作業員から。コツコツ勉強を続けることで、ITエンジニアになることができました。これからも地道に『独学×資格×勉強=スキルUP&収入UP』を目指していきます。

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