IT高度試験の午前2【私の失敗談】
IT高度試験の午前2【私の失敗談】
情報処理技術者試験の高度試験で、私が午前2で足切りを食らったのは、平成30年に受験したシステム監査技術者試験でした。
既に「情報セキュリティアドミニストレータ試験(旧区分)」「ITサービスマネージャ試験」に合格していたため、自信過剰になっており、速報の答え合わせすらしていませんでした。合格発表日に成績照会を行ったときの衝撃は、今でも忘れられません。「なんでこんなに点数が足りないのか!」「なぜ落ちたのか!」という思いが、強く心に残りました。
今考えると、私はかなりの部分で誤答していただけだと思います。明らかに合格ラインに届く点数ではありませんでした。しかし、この失敗は私にとって貴重な経験になりました。その後、(現時点では)午前2で不合格になったことはありません。同じ試験に挑むみなさんに、私が失敗から得たことを、みっつ共有したいと思います。
- 効率主義の落とし穴
- 高度試験の各科目の目的
- 午前2の勉強方法
効率主義の落とし穴
情報処理技術者試験の高度試験は、本当にとても難易度が高いです。
偏差値71【超難関】ITストラテジスト試験(ST)
偏差値70【難関】システム監査技術者試験(AU)
偏差値67【難関】ネットワークスペシャリスト試験(NW)
偏差値67【難関】データベーススペシャリスト試験(DB)
偏差値67【難関】エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES)
偏差値67【難関】情報セキュリティスペシャリスト試験(SC)
偏差値67【難関】情報処理安全確保支援士試験(SC)※偏差値65【難関】応用情報技術者試験(AP)合格は、午前1が免除対象条件
資格の取り方
高度試験の午前2は、試験時間が40分で出題数は25問、合格基準の60%を満たすために15問以上の正答が必要です。この試験の特徴は、試験時間が短く、ミスの余地がほとんどないことです。しかし、午後対策に多くの勉強時間を費やす必要があるため、午前対策は効率的に行わなければいけません。
- 午前対策はなるべくしない
- 過去問題の暗記だけでいい
という、午前対策を提案しているところもあります。
しかし、私はこの効率的な午前対策は行いません。なぜならば、この方法を実践して、午前2で手痛い足切りを経験したからです。合格体験記などを拝見すると、この方法で成功を収めた方々が多くいらっしゃいます。確かにこれは、ひとつの有効な学習方法でしょう。それと同時に、この学習方法が全ての人に適しているわけではない、と私は考えています。
もちろん、午前対策より午後対策に勉強時間は必須です。私自身、午前1・午前2は過去問題を繰り返し周回することで、突破しています。しかし、「午前対策は午後対策に役立たない」という思い込みが受験者にあり、この効率的な午前対策の根幹になっているのではないでしょうか。そして、そもそもこの思い込みに問題があるのではないでしょうか。
実務経験が豊富な方や他区分を網羅合格済みの方は、午前対策を最小限に抑えて過去問題の暗記だけで合格できるかもしれません。ですが、自分の経験のない区分では、午前対策は午後対策に直結します。つまり、午前対策が午後対策に役立つのであれば、十分な勉強時間を取るべきでしょう。特に、午前2で躓くのであれば、知識不足や内容の不理解を疑う必要があると思います。
私が午前2試験で足切りを経験し、システム監査技術者の再勉強を行ったときに、知識不足だけでなく、誤った内容理解をしていたことに気付きました。自信満々で受験した午前2の点数が伸びなかったのは当然の結果です。
高度試験の各科目の目的
IPAでは、試験の「試験要綱・シラバス」を発表しています。受験の都度、私はこの内容をしっかり確認しています。なぜならば、複数の高度試験を受験した経験から、高度試験の各科目には明確な意味があることを実感しているからです。
高度試験は、どの区分も「共通キャリア・スキルフレームワーク」の「レベル4」が想定されています。共通キャリア・スキルフレームワークの詳細は割愛しますが、このレベル4では、レベル3までのスキルがあることが前提とされています。そして、応用情報技術者試験は、レベル3が想定されています。
午前1
午前1では、受験者が共通キャリア・スキルフレームワークのレベル3を満たしているかどうかをテストしていると考えられます。実際に、応用情報技術者試験の合格(レベル3の合格)が、午前1の免除条件になっています。
午後1
試験要綱にある「業務と役割」を満たすかどうかをテストしていると考えられます。なぜならば、「基づいて」「踏まえて」「考慮して」「要求を分析して」といった表現から、午後1の特徴である「問題文に与えられた条件から、適切な解答を導き出す」ことを示唆しているからです。
午後2
試験要綱にある「期待する技術水準」を満たすかどうかをテストしていると考えられます。なぜならば、「策定できる」「提案できる」「構築できる」「実現できる」といった表現から、午後2の特徴である「自身の経験や知識に基づいて、適切な解答を作成できる」ことを示唆しているからです。
午前2
では、午前2のテストの目的は何でしょうか?
私は、午前1のレベル3を満たしていることを確認すると同時に、その受験区分のレベル3まで到達していることを確認するテストではないか、と考えています。
まず、午前1には免除制度があります。しかし、偶然に免除の成績を取った人がいるのであれば、この高度試験では除外したいと考えるでしょう。そのため、免除を持っていたとしても、レベル3の能力を持っている人材であることを担保しておきたいと思われます。
同様に、受験区分の最低限の知識、すなわちその専門の基本基礎の知識を保有していることも、確認しておきたいと思われます。午後は記述・論述になるため、採点がとてつもなく大変でしょう。そのため、採点作業の負担を増やさないためにも、午前2を厳しく設定し、テストしているのではないでしょうか。
つまり、午前2の目的は、「午前1のレベル3を満たしている」ことと「受験区分の基本基礎を身につけている」こと、ふたつの要求事項を確認するテストなのではないでしょうか。
午前2の勉強方法
午前2の勉強方法はどのように行うべきでしょうか。
私が参考にしているサイトがあります。
IT資格の歩き方
このサイトでは、午前2の出題内容を詳しく分析し、対策を紹介しています。どの受験区分でも共通して言えることは、以下の4点です。
- 受験区分の重要出題分野をしっかり勉強する
- 過去問題を理解する
- 受験区分の特性に応じて、必要な資料を確認する(例:システム監査基準、ITIL®、PMBOK、JIS規格、情報セキュリティ白書など)
- 余裕があれば、他の区分の問題にも目を通す
私が特におすすめしたいのは、自分が受験した区分の対策ですが、他の区分でも同様に役立つ情報があると思います。午前2対策に悩んでいる方は、ぜひ一度、サイトを覗いてみてください。
効率的な勉強と本質的な勉強のバランス
IT化やデジタル化、DXといった概念は、この試験を受験する人にとって身近なテーマであり、効率化は当然の目標と考えられます。だからこそ、効率的に合格するためには、本質的な勉強とのバランスが重要です。
まずは、午前テストの目的を理解した上で、過去問題を繰り返し解いたり、用語を暗記したりすることが大切です。ただし、意味もなく過去問題をただひたすら解いたり、出題された用語を単純に覚えたりするのではなく、自分の苦手な部分に重点を置きましょう。
通常の資格試験などでは、得意な分野を伸ばすことで総合的な点数を上げる方法もありますが、これは科目での足切り(点数の下限設定を含む)がない場合の話です。足切りがあるテストでは、苦手な部分で足切りをされてしまえば、そこで試験は終了してしまいます。
例えば、私はQC検定2級を受検しましたが、高度試験と同様に足切りを経験しました。これは、得意な分野を伸ばすのではなく、勉強計画で苦手な部分にもっと重点を置くべきだったという教訓です。
先程のべたとおり、午前2試験は40分間で25問しかありません。出題数が少ないため、苦手な分野が多く出題されると足切りを覚悟しなければなりません。自分の間違えやすい問題や苦手な分野を克服するために、十分な時間と努力を注ぎましょう。
そして、この「苦手をなくす」勉強に過度な時間を費やさないことが、本当の効率化です。なぜならば、高度試験の核心が午後1と午後2にあるからです。この午後対策をもって、受験区分の本質的な勉強を行わなければいけないからです。午前試験では、満点を目指す必要はありません。真に効率的な午前対策を行い、その余剰時間は午後対策に割り当てて、合格を目指しましょう。
結論:IT高度試験の午前2【私の失敗談】
私は午前2不合格から学んだことが、みっつあります。
- 効率主義には注意が必要
- 高度試験の各科目にはそれぞれ目的がある
- 午前2の勉強方法には工夫が必要
午前2は、ただ問題を解くだけでなく、自分の弱点を特定し、それらに集中的に取り組むことが重要です。また、午前試験の成績は合格に直結しないため、完璧を求めすぎず、時間を効率的に使う必要があります。
効率的な勉強と本質的な勉強のバランスをとるのは難しいですが、しっかりとした勉強計画を立てて乗り越え、必ず合格を勝ち取りましょう。
【午前対策 推薦参考書】
がっつり午前対策を行い方には、こちらの参考書をオススメします!
(Amazon)情報処理教科書 高度試験午前Ⅰ・Ⅱ