エンジニアが本気で調剤事務管理士を勉強したら、意外とロジカルな資格だった件
調剤事務管理士は薬価計算やレセプト算定など、明確なルールに基づくロジカルな資格です。エンジニア視点で学ぶと仕組みの理解が進み、実務にも活かしやすい内容でした。
調剤事務管理士を受験してみた
「普通の事務とは違うから」
この一言を聞いたとき、少しばかり……いや、正直かなり引っかかりを覚えました。
普通の事務とは?普通ではないとは?
「ザクとは違うのだよ!ザクとは!!」
と反応してしまったのはさておき、医療の世界が「普通ではない」ことは確かです。処方の誤りは患者さんの体に直接影響し、ときに命に関わります。
もちろん現場の人々が誇りを持ち、真剣に向き合っていることは理解しています。
それでも、「普通の事務が簡単」というニュアンスに聞こえてしまう表現がどうにも気になりました。仕事内容に優劣をつけるような言い方は、誰にとっても失礼ですし、私自身その“なんとなくの偏見”が苦手なのです。
そしてなにより、自分のミスで患者さんに迷惑をかけるのは絶対に避けたい。その思いから、調剤事務をきちんと理解するために資格の勉強を始めました。
実はこの動機、以前に日本語検定を受験したときとほぼ同じだったりします。
・詳しくはこちら
→日本語検定2級を受検してみた
“知らない世界をきちんと理解したい”
“相手の言動の背景を、できるだけ科学的に把握したい”
この性分が、エンジニアとしての習慣なのかもしれませんね。
調剤事務管理士とは?
正式名称は「調剤事務管理士®技能認定試験」(商標登録あり、当ブログでは®は表記しないものとする)であり、技能認定振興協会が主催する民間資格のひとつです。特徴は、他の医療系資格とは違って 受験資格の条件が一切ない こと。誰でも挑戦できます。
調剤薬局での受付対応や処方せんの点検、調剤報酬請求(レセプト)の作成などに必要な知識とスキルを証明する資格
公式サイト https://www.ginou.co.jp/
医療事務が病院全体の事務を扱うのに対し、調剤事務は「薬局に特化」した知識体系になっています。薬価計算、点数算定、調剤報酬の仕組みなど、少しクセのある領域を学ぶことになります。
これから資格を取ろうとしている人は、「どの現場に立つのか」「何の業務に携わるのか」を基準に選ぶのが大切です。医療・調剤・介護、それぞれにまったく別の“レセプト世界”があり、求められる知識も資格も異なります。
参考書と勉強方法、実務について
参考書と勉強
まず最初にぶつかったのは、教材の少なさです。民間資格特有の、体系的にまとまった公式テキストがほとんどありません。
私が実際に使ったのは以下の3冊です。
(Amazon)これで安心! はじめての調剤事務【秀和システム】
(Amazon)調剤報酬請求事務 基礎知識とレセプト作成【TAC出版】
(Amazon)ひとりで学べる 調剤報酬事務&レセプト作例集【ナツメ社】
「はじめての調剤事務」で実務知識をざっと押さえ、TACの本で試験問題や苦手分野を補強しました。
しかし、ただでさえ参考書が少ないうえに 表現や解説が本によって違います。調べたい解説が一冊では見当たらず、結局複数冊を広げて“仕様書を突き合わせる”ように学ぶしかありませんでした。
勉強と実務
私が調剤業務に携わり始めたのは10月下旬。そこから毎日、処方箋・レセプト・薬剤名と向き合いました。雑務や入出庫作業などもあるため完全な“勉強時間”ではないものの、実務の大半が資格勉強に直結していました。
そして最も興味深かったのは、薬価計算や点数算定が、ほぼアルゴリズムでできていることです。加算の条件、算定タイミング、薬剤料の積み上げなど、どれも if文+例外処理の集合体のような性質があります。
このおかげで、計算問題はパターン認識で突破しやすく、問題文のクセを見抜く力が自然と鍛えることができました。エンジニアとしての経験がそのまま役立つ瞬間が多く、調剤事務でアルゴリズム筋を使う日が来るとは思わなかった、というのが率直な感想です。
身に着ける、ということ
調剤事務管理士の試験は
- インターネット試験(随時)
- 在宅試験(紙/月1回)
の2種類があります。私は自宅で受けられるインターネット試験を選びました。
自宅受験と聞くと「参考書を見ながら解けるなら簡単なのでは?」と思うかもしれません。ところが実際はそんなに甘くありません。
“検索自由”程度ではにわか受験者は合格できない仕組み になっています。なぜならば、“手元の資料を見つつ、自分で読み解き、判断し、答えを導く力” が必要だからです。
私は調剤事務に携わってから、わずか一か月で受験でした。一か月と言えども、仕事で実務を行い日々勉強し、自宅でしっかり日々レセプト練習をしていました。それでも制限時間ギリギリで全問記入という状況でした。
資格を取ったからといって劇的に仕事が変わるわけではありません。それでも自信をもって業務に入れるという意味では非常に大きな価値があります。
そしてなにより、資格勉強以上に「実務のほうが圧倒的に学びになる」のがこの世界です。調剤はルールと例外の塊で、現場に触れて初めて理解できることが山ほどあります。
エンジニアとして嬉しかったのは医療システム(レセコン)に触れられたことです。これまで扱った経理・労務・建築安全管理システムとはまったく違うロジックで、“比較するだけで楽しい”という感覚がありました。
「現場の業務理解×システム理解」
この2つがつながる瞬間は、まさにエンジニア冥利に尽きますね。
これから調剤事務管理士を受験してみようと思う方は
調剤事務管理士は、次のような人に向いていると感じました。
- ロジカル思考が得意な人
- 細かい条件や例外ルールを理解するのが苦でない人
- 医療事務の基礎を押さえたい人
- 異業種の知識を身につけたい人
- 実務を通して学ぶのが好きな人
逆に、
- 研修込みで体系的に学びたい
- 病院全体の事務をやりたい
という人には、別の医療事務資格のほうが向いている可能性があります。
資格選びは“どこで働くか/何をしたいか”で変わります。調剤の世界を知る入口として、この資格は十分すぎるほど適しています。
まとめ:調剤事務管理士を受験してみた
調剤事務管理士の勉強は、思っていた以上にロジカルで、そして面白い世界でした。エンジニアでも自然に楽しめる領域であり、異分野に触れることで視野が広がる感覚も強くあります。 未知の領域に踏み出すと、仕事観にもアイデアにも確実に変化が生まれます。今回得た学びは、きっと別の勉強にも応用できるはずです。慢心せず、これからも日々積み上げていこうと思います。