集中力の育て方 #4【中級編:腸】

集中力の育て方 #4【中級編:腸】
腸は「第二の脳」と呼ばれるほど重要な器官であり、腸と脳には密接な関係がある。人体の免疫システムの約80%を司り、ありとあらゆる病気の約90%は腸内環境に起因すると考える説があるほど、身体全体に影響を及ぼす。
また、腸と脳は迷走神経を通じて直接つながり、腸内環境の状態が脳の働きに影響を与えることがわかっている。
大事な試合の直前にお腹が痛くなってしまったり、お腹を壊してしまったりするのは、脳と腸がつながっている証拠のひとつだろう。本番で十分な成果を発揮するためにも、腸のことを学んで欲しい。
腸内環境が集中力を左右する理由
上記の「迷走神経」とは、副交感神経の代表的な神経で、複雑な走行を示し、頸部と胸部内臓、さらには腹部内臓にまで分布している。脳神経中最大の分布領域を持ち、主として副交感神経繊維からなるが、交感神経とも拮抗し、声帯、心臓、胃腸、消化腺の運動、分泌を支配する。多数に枝分れしてきわめて複雑な経路を示すのでこの名がつけられた。
迷走神経は、脳神経の中で唯一、腹部にまで到達する神経である。
【参照:自律神経LAB】
腸は迷走神経を通して、脳に直接働きかけているため、腸内環境が悪化すると、メンタル面に影響が出てしまう。
① 思考の鈍化
不健康な消化器系が脳機能に悪影響を及ぼすことで、思考スピードが低下する。
② ブレインフォッグ(脳の霧)
ブレインフォッグは医学的な診断名ではなく、症状の総称である。近年では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症としても注目されており、その名の通り、頭の中に霧がかかったようにぼんやりとした状態が続く症状のことを指し、集中力が大幅に落ちてしまう。
③ 衝動性の増加
脳内の状態が不安定になり、感情的になりやすくなる。
腸内環境を改善するまでの期間
腸内細菌のバランスは、食生活の変化によって短期間で変化することが報告されている。
① 摂取カロリーの変更
摂取カロリーを大幅に変化させた試験では、わずか3日で腸内マイクロバイオームに劇的な変化が起きたと報告されている。
② 食事内容の変更
動物性の食事(肉、卵、チーズなどが中心)から植物性(穀物、豆類、果物が中心)に切り替えた場合でも短期的に腸内マイクロバイオームが変わったとのデータがある。
ただし、この変化は一時的で、元の食生活に戻すと腸内細菌のバランスも逆戻りしてしまう。つまり、食事による変化は永久的ではないと思慮されるだろう。このため、腸内環境を整える食生活は、継続することが重要である。
腸に良い食べ物・悪い食べ物
腸に良い食べ物
① 発酵食品
- キムチ(乳酸菌)
- 発酵ピクルス(乳酸菌)
- ザワークラウト(乳酸菌)
- グラスフェッドバターやギー(腸内環境改善に役立つ共役リノール酸と酪酸(別名ブチル酸))
- 発酵豆乳(ビフィズス菌と乳酸菌を増やす効果あり) など
② 食物繊維
- 男性は一日約40グラム
- 女性は一日約25グラム(妊娠・授乳中は多めで良い)
腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を健全に保つ
③ ココア
約24%の食物繊維を含み、便秘改善効果も期待できる。
腸に悪い食べ物
① グルテンを含む食品
小腸内の内壁を刺激し、栄養吸収を妨げる可能性がある。
② 精製された油
オリーブオイルやココナッツオイルでも精製されたものは避けるべき。
③ 一般的なバターやサラダ油
炎症性腸疾患(IBD)と過敏性腸症候群(IBS)のリスクを高める可能性がある。
腸に良いこと
エクササイズ
腸内の善玉菌を増やし、食欲のコントロールに役立つ。
腸に悪いこと
ストレス過多
消化機能の低下を引き起こし、腸内環境を悪化させる。
まとめ:集中力の育て方 #4【中級編:脳と腸】
腸を整えることは、脳の働きを改善することにつながる。集中力を向上させたいならば、腸内環境の改善は欠かせない重要な要素となるだろう。
取り組むべきこと
- 腸内環境に悪影響を与える食品を避ける
- 消化器系に優しい食事を心がける
- ストレスを減らし、エクササイズを日常生活に取り入れる
これらを継続的に実践することで、腸内環境が整い、脳機能が向上し、結果として集中力アップが期待できるだろう。
これまでの記事でも「食事」がアスリートにとって重要であることを述べてきたが、「腸改善を通じた集中力向上」という新たな視点から、普段の食生活を見直してみるのもひとつの手法となるだろう。
【参考文献】
(Amazon)ヤバい集中力
(Amazon)最高の体調