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水分摂取で考えておくべきこと【生物学・栄養学的分析】

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水分摂取で考えておくべきこと【生物学・栄養学的分析】

スポーツドリンクとは

最初に、スポーツドリンクの「栄養成分表示」や「原材料」のラベルを見て欲しい。そこには「名称:清涼飲料水」と記載されているだろう。

では「清涼飲料水」とはどんな「水」なのだろうか?

 清涼飲料水とは“乳酸菌飲料、乳及び乳製品を除く酒精分1容量%未満の飲料”

引用:一般社団法人 全国清涼飲料工業会

つまり、乳酸菌飲料や乳製品を除いた、アルコール分が1%未満の飲み物全てを含む。清涼飲料水という言葉から身体に良さそうなイメージが湧くかもしれないが、お茶やコーヒー、豆乳、野菜ジュース、ミネラルウォーター、甘酒、味噌汁、おしるこなども、全て清涼飲料水に分類されてしまう。

清涼飲料水の種類は約6,200種類もあり、ブランドや容器、容量別にさらに細かくカテゴライズされ、店頭に並んでいる。この中で「スポーツドリンク」と称されるのは、「電解質(ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、ミネラル(マグネシウム・カルシウム)」が含まれる飲料だ。

スポーツドリンクの発端

スポーツドリンクが注目を集め始めたのは、1970年代のニューヨークシティマラソンを契機としたジョギング・ブームがきっかけである。スポーツ用品や飲料メーカーは、この成長市場に目を付け、自称アスリートたちに向けて専用ドリンクを発売した。特に、日本では2015年に撤退した「ゲータレード」が、この専用ドリンク「スポーツドリンク」の火付け役となり、巨大市場の形成につながったのである。

しかし、スポーツドリンクがパフォーマンスの向上や身体に良い影響を与えるとは限らない。

糖分の影響

下の表を見て欲しい。ペットボトル1本(500ml)に含まれる糖分量である。

一日の糖分(砂糖)摂取量の目安は、自分の体重をg換算した数字の0.05%である(WHO指針)。例えば、体重60kgの人であれば、以下の計算となる

60,000g×0.05÷100=30g

これが適切な糖分摂取量の上限である。つまり、体重60kgの成人がコカ・コーラを500ml飲むと、あっという間に1日の上限摂取量をオーバーしてしまう。無論、これをスポーツドリンクに置き換えた場合でも、摂取量オーバーは避けられない。

果糖ぶどう糖液糖の影響

次に、「砂糖」の他に添加されている「果糖ぶどう糖液糖」に注目して欲しい。これは多くのスポーツドリンクや清涼飲料水に含まれている。

この「果糖ぶどう糖液糖」は「異性化糖」のひとつであり、主にトウモロコシから作られる高フルクトース・コーンシロップのことだ。含まれる果糖が50%未満のものは「ぶどう糖果糖液糖」、50%以上90%未満のものは「果糖ぶどう糖液糖」、90%以上のものは「高果糖液糖」と呼ばれる。

この異性化糖を食品に加えなければならない、合理的な理由は以下のとおりである。

1:おいしくない食品がおいしくなる

人間の舌は、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味という五つの味覚を感知できる。糖分は他の味覚の欠点を補い、食品をおいしく感じさせる効果があるのだ。

2:保存料として使える

糖分は水分活性を減らし、微生物が増えにくくするため、食品が腐りにくくなる。腐食防止のために異性化糖を添加されているため、ミネラルウォーターは「清涼飲料水」であるのだ。

では、砂糖にしても、果糖ぶどう糖液糖にしても、摂取量オーバーしなければ、問題ないのだろうか?

どの食べ物で摂ってもカロリーは同じ働き?

カロリーの消費量は体によってコントロールされ、摂取されたカロリーの量だけでなく、その質にも依存している。近年、食べ物のカロリー計算が主流となり、「どの食べ物で摂ってもカロリーは同じ働きをする」という誤解が広がっているのだ。

実際には、どの食べ物でどの栄養を摂ろうとも、カロリーは同じ働きをするわけではない。例えば、脂質はどんな種類でも燃焼されると1グラムにつき9.0キロカロリーのエネルギーを放出するが、全ての脂質が同じ働きをするわけではない。良質な脂質(抗炎症作用を持つものなど)もあれば、心臓病や脂肪肝を引き起こす悪質な脂質も存在している。

同様に、タンパク質やアミノ酸も、1グラムあたり4.1キロカロリーのエネルギーを放出するが、その質には大きな差がある。例えば、食欲を抑える効果のある質の高いタンパク質(卵など)もあれば、インスリン抵抗性とメタボリックシンドロームに関連する分枝鎖アミノ酸を多く含む質の低いタンパク質(ハンバーガーのパティなど)もある。

さらに、炭水化物も1グラムあたり4.1キロカロリーのエネルギーを放出するが、デンプンと糖分という2つのクラスに分けられる。デンプンはブドウ糖のみで構成され、甘みが少なく、体内の全ての細胞でエネルギー源として利用される。一方、糖分(ブドウ糖、ガラクトース、麦芽糖、乳糖など)の中でも異性化糖である果糖は非常に甘く、唯一肝臓で代謝され、脂質に変換されて肝臓に蓄積されてしまう。

これが、「果糖ブドウ糖液糖」を摂取すべきではない重大な理由なのである。

スポーツドリンクには「電解質」が含まれており、これはスポーツをする人にとって必要な成分だ。運動中に大量の汗をかくと、水分とともに体内の電解質も失われるため、これを補給する必要がある。しかし、スポーツドリンクには多くの不要な添加物が含まれており、スポーツ中に飲むには適さない場合が多い。

水分摂取の目的とタイミング

競技前の摂取

目的:体調管理、競技パフォーマンスの向上

運動の2時間前には、400mlから600mlの水を飲んでおくことが推奨される。これは脱水症状を防ぎ、筋肉痛の予防に効果があるからだ。また、運動の1時間前にカフェインを摂取すると、その後の筋肉痛や疲労が軽減されるため、カフェインが苦手でなければ活用するのも良いだろう。

競技中の摂取

目的:競技パフォーマンスの維持、向上

十分に水分を摂り、バランスの取れた食事をしていれば、1日に2時間ほどの運動では、(特に高強度でない限り)競技パフォーマンスはさほど落ちない。競技中は、15分から20分おきに150mlから300mlの水を飲むことが重要である。喉が渇く前にこまめに補給することが大切であり、運動中に脱水症状が起きてしまうと筋肉痛が著しく悪化することが確認されている。

また、90分以上の運動を行う場合は、電解質飲料を飲むようにしたい。尿の色が濃い(中黄色や濃黄色)場合や喉の渇きを感じる場合は、既に脱水症状が進行しているため、速やかな水分補給が必要である。競技中に糖分補給が必要であればスポーツドリンクを、特に必要でなければ経口補水液を検討して欲しい。

ボウリングのように競技強度が低く、飲み物や食べ物が摂取できるスポーツでは、水分補給に最適な組み合わせは「水とバナナ」だろう。水で水分を補給し、バナナでカリウムや糖質などのエネルギーを効率的に摂取できる。持ち運びに便利なバナナを活用して欲しい。

競技後の摂取

目的:体調管理、リカバリー促進

運動後は水分補給を行うと共に、30分以内にタンパク質と炭水化物を摂取するのが望ましい。必要な栄養素を筋肉に供給することで、回復プロセスを早めることができるからだ。タンパク質はホエイプロテインやギリシャヨーグルト、炭水化物には栄養価の高いバナナがおすすめである。

また、65歳以上の方は、喉の渇きに対する感度が低くなり、脱水になりやすいので注意する。特に、運動中や運動後の水分補給には気をつけなければならない。ただし、腎臓からの余分な水分やナトリウムの排泄が遅いため、水の飲み過ぎ(低ナトリウム血症のリスク)や塩分の摂り過ぎ(血圧上昇のリスク)にも注意が必要となる。

熱中症予防とは

スポーツでの水分摂取と熱中症予防は、切っても切れない関係にある。熱中症予防で最も重要なのは「暑さを避ける」ことだ。スポーツだけでなく、屋外での仕事など、やむを得ない状況もあるため、政府のガイドラインが細かく設定されている。

■参考資料

→熱中症予防についてのリーフレット【厚生労働省】

→高齢者のための熱中症対策リーフレット【厚生労働省】

→職場の熱中症対策【厚生労働省】
 ①STOP!熱中症クールワークキャンペーン
 ②みんなで防ごう!熱中症

ここで注目すべき点は、「水分・塩分を摂る」ことが推奨されていることだ。では、なぜ「スポーツドリンク」では不十分なのか?

それは環境省の資料で明確にされている。

■参考資料

→熱中症環境保健マニュアル【環境省】

■39ページからの引用(抜粋)

引用:熱中症環境保健マニュアル【環境省】 39ページから抜粋

大量の発汗がある場合は水だけでなく、スポーツ飲料等の塩分濃度0.1~0.2%程度の水分摂取が薦められます。ただし、これらの飲料には糖分を多量に(500㎖のペットボトル1本中、30g以上)含むものもあるので、飲みすぎによる糖分の過剰摂取に気をつけましょう。

前述のとおり、スポーツドリンクポーツドリンクでは不必要に糖分を摂取しすぎてしまうリスクがある。熱中症の疑いがある場合は、ガイドラインに従って応急処置を行い、医療機関を受診するのが適切である。決して、スポーツドリンクをがぶ飲みしてはいけない。

この記事を読んだ方は、改めて「スポーツドリンク」と「経口補水液」の成分表を確認して欲しい。

自分が何を摂取しているのか、それが体内でどのような作用を及ぼし、運動にどのような影響を与えるのか、改めて冷静に考えてみて欲しい。

まとめ:水分摂取で考えておくべきこと【生物学・栄養学的分析】

スポーツドリンクに含まれる糖分や異性化糖(果糖ブドウ糖液糖)の影響について理解し、過剰摂取を避ける必要がある。スポーツドリンクは必要な電解質を含む一方で、余分な添加物が多く含まれていることが多いため、適切な代替品(例:経口補水液、水とバナナなど)の利用を検討して欲しい。

適切な水分摂取は、運動パフォーマンスの向上や体調管理に欠かせない要素である。運動前、運動中、運動後において、どのような水分補給が必要かを理解し、適切に実践することが重要だ。水分摂取に関する正しい知識を持つことで、健康的な運動習慣を維持し、体調管理に役立てることができるだろう。

 

【参考文献】
(Amazon)果糖中毒
(Amazon)トレーニングとリカバリーの科学的基礎

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満稀(みつき)
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全くボウリングに向いていない運営者
ボウリングに向いている部分は、なにひとつありません。なにひとつ向いていないからこそ、ひとつひとつに対して、ボウリングについて真剣に考えます。
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