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振り子の科学と振り子の生物学【学術的分析】

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振り子の科学

ボウリングは振り子の動作で投球する。そもそも振り子とは…

空間固定点(支点)から吊され、重力の作用により、揺れを繰り返す物体である。支点での摩擦や空気抵抗のない理想の環境では永久に揺れ続けることができる。

振り子:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

振り子の動作と投球動作は、とても似ている。実際、投球の説明に振り子が利用されるのと同様に、振り子の説明にボウリングが利用されていることも多い。

ではなぜ、投球を振り子に例えるのだろう。

投球の目的は、多くのピンを倒すことである(本件では、スペアについては除外する)。できれば10本を一投球で倒す、ストライクが出るのが望ましい。ストライクを出すためには、何を考えればいいのだろうか。

  • ボールを大きくする
  • ピンを軽くする
  • ボールを重くする
  • ボールスピードを速くする など

いろいろ対策は尽きない。が、競技・スポーツというレギュレーション上、ボールを大きくしたりピンを軽くすることは現実的ではない。レギュレーションの中で可能なことは、ルール範囲内でボールを重くしたり、速いボールを投げられるようになることだろう。

もう一度話を戻す。なぜ、投球を振り子に例えるのか。

振り子には、理解しやすいエネルギー保存の法則が働くからだ。難しい物理理論を必要とせず、単純明快にエネルギーが伝達される。もちろん、わかりやすいだけではなく、エネルギーの損失が少ない理想的な理論でもある。

力学的エネルギー保存の法則

振り子では、どのように力が発揮されているのか。簡単に説明していく。

①エネルギーを持っている物体

エネルギーを持っている物体は、他の物体を動かすことができる。他の物体を変形させることができる。他の物体を壊すことができる。

②位置エネルギー

位置エネルギーは、高いところにある物体が持つエネルギーである。例えば、高いところにある鉄球は、下にある物体を変形・破壊できる=エネルギーを持っている。この鉄球の破壊力を大きくするには、より重い鉄球に変える。より高い位置から落とす。

つまり、高さ=位置によって決まるエネルギーのため、位置エネルギーと言われる。位置エネルギーは、重さに比例し、高さにも比例する。

③運動エネルギー

運動エネルギーは、動いている物体が持つエネルギーである。例えば、鉄球を転がして、車にぶつけることを考える。鉄球をぶつけると、車は破壊・変形される=動いている鉄球はそれだけでエネルギーを持っている。この場合、鉄球の破壊力を大きくするには、より質量の大きな鉄球でぶつける。質量は変えず、思いっきり勢いをつけて(速さを大きくして)ぶつける。

つまり、速さ=その物体の動きによって決まるエネルギーのため、運動エネルギーと言われる。運動エネルギーは、質量に比例し、速さの二乗に比例する。

④力学的エネルギー保存の法則

力学的エネルギー=位置エネルギー+運動エネルギー
(※計算式などは、本件では使用しないため割愛)

つまり、外部からの力(摩擦力や空気抵抗など)を受けない限り、力学的エネルギーは一定である。

振り子投球

投球の目的は、多くのピンを倒すことである。多くのピンを倒すためには、投球するボールに大きな力を与えなければならない。そのために、何ができるのか。

先程は物体を変形・破壊したが、ボウリングでは「他の物体を動かす力=ボールがピンを倒す力」があれば充分である。振り子理論では、「他の物体を動かす力」について明白にされている。

・振り子が物体を動かす力は速さと重さに依存する
 ①おもりが重い方が物体を遠くに飛ばす
 ②おもりが速い方が物体を遠くに飛ばす

①おもりが重い方が物体を遠くに飛ばす

これは直感的に理解できるだろう。例えば、同じ速度で走っていた場合、軽自動車にぶつかるのとトラックにぶつかるのでは、トラックにぶつかる方がより危険である。無論、私はどちらにもぶつかりたくない。

②おもりが速い方が物体を遠くに飛ばす

おもりの速さは、支点の真下で最も早くなる。また、おもりの速さは手を放す高さが高い方が速くなる。

だが、ここで間違えてはいけないことがある。「手を放す高さが高いほど、振り子が物体を動かす力は大きい」は部分的にしか成立しないことだ。つまり、図では支点の真下で物体にぶつかっているため、「速度が最も速い+高さのある方が速い」のであり、「高さが高いから速い」わけではないのである。

つまり、「振り子の速さは手を放す高さ(+支点の真下であること)によって決まり、振り子の長さやおもりの重さとは無関係」であることを知らなければならない。

振り子の長さ

振り子には「周期」がある。振り子が一往復する時間のことを指す。振り子の周期は振り子の長さのみ、によって決まる。おもりの重さを変えたり、おもりを落とす高さを変えても、周期は変化しない。

  • 振り子の長さを長くすると周期は長くなる(一往復する時間が長くなる)
  • 振り子の長さを短くすると周期は短くなる(一往復する時間が短くなる)
  • おもりの重さや手を放す高さは、周期とは無関係である

投球者の腕の長さを、長くしたり短くしたりはできないため、この周期を意図的に変化させることができない。つまり、重さと高さに無関係で周期(一往復の時間)が一定であるということは、周期がリリースタイミングに影響を与えるということである。

振り子投球のひとつの結論として、理想的な振り子投球で多くのピンを倒したいのであれば、「ボールを重くする」ことと「バックスイング高くする」ことが必要条件となる。

振り子の生物学

振り子理論は、中学・高校で習う物理学である。そんなに難しい内容ではない。では、ここで落ち着いて考えてみよう。

振り子投球は、生物学上のヒトにとって実現可能な投球であるのか。

振り子は、支点に糸でおもりをつるす。ボウリングでは、支点が肩関節、糸が腕、おもりのボールはサムとフィンガーを引っかけているものの、手のひらに乗っかっている状態だ。振り子と比べて、不安定この上ない。また、振り子の糸は外からの干渉がない限り、途中で折れたり曲がったりすることはないが、ヒトは肘、手首や手指が自由に動くため、途中で折れたり曲がったりしてしまう。

いや、そんなことはない。ボールの重さを利用して、腕や手指の力を抜けば、振り子の動作はできる。と言われているが、本当に可能なのだろうか。

肩関節と筋肉

肩関節は、球状関節と呼ばれている。理論上は、振り子の支点と同じである。だが、ボールを持たなくても、腕をまっすぐ後ろに振り上げるのは難しいはずだ。また、高い位置にまで振り上げることはもっと難しいはずだ。

理由のひとつとして、肩の筋肉構成が阻害しているためである。

  • 棘上筋~回旋筋腱板のひとつ。棘上筋腱は肩甲骨側から上腕骨に付着している。肩の外転(手を横に挙げる)に作用する。
  • 棘下筋~回旋筋腱板のひとつ。棘下筋腱は肩甲骨側から上腕骨に付着している。肩の外旋(外側に捻る動き)と水平に伸ばす動きに作用する。
  • 肩甲下筋~回旋筋腱板のひとつ。肩甲骨の裏側から上腕骨に付着している。肩の内旋(内側に捻る動き)に作用する。
  • 小円筋~回旋筋腱板のひとつ。小円筋腱は肩甲骨の外側から上腕骨に付着している。肩の外旋(外側に捻る動き)に作用する。

肩は筋肉同士が互いに作用して腕を動かしているのであり、よくよく確認してみると、「まっすぐ動かす」筋肉は存在していない。どれも筋肉を転回、旋回させながら動かすということになる。

日本整形外科学会では、肩の正常関節可動域を示している。

  • 屈曲・・・180°
  • 伸展・・・50°
  • 外転・・・180°
  • 内転・・・0°
  • 内旋・・・80°
  • 外旋・・・60°

バックスイングを高くするとよく言われるのが、「肩を開くな」というアドバイスである。しかし、生物学的に肩を開かず(外転、外旋させず)に腕を後ろに持ち上げることはできない。

つまり、高いバックスイングをしている人ほど、振り子ではなく自分の筋力で投げているということである。

肘関節

肘関節は、蝶番関節と呼ばれている。これはドアの蝶番のように一方向のみに動くからだ。主な動きは屈曲と伸展のみとなる。

振り子でも、肘関節の蝶番と同じような現象が説明されている。振り子の途中にくぎがある場合、糸が折れ曲がったとしても、おもりを離した位置と同じ高さまで上がる。

同じ高さまで上がるのであれば、エネルギーに変化はないと考えたいが、くぎに触れた位置で振り子の長さが変わるため、速さに変化が起こる。

つまり、肘関節で折れた場合は、投球している腕の速度が自動的に上がらなければならないということになる。

手首、手指関節

長くなりすぎるため細かい説明は省くが、他の関節や筋肉と比べて、可動域が広く柔軟な動きができることが多い。代わりに、付着している筋肉が小さいため、腕や足のような大きな力を手首、手指だけで発揮することは難しい。

試しに、腕をテーブルや床につけたまま、ボウリングのボールを手首、手指だけで持ち上げてみて欲しい。ボールを支えることですら大変だろう。

つまり、重たいボールを保持できるのは、腕の大きな筋力があるからということだ。

実際に行われている振り子投球の真実

高いバックスイングをしている人ほど、振り子ではなく自分の筋力で投げている。重たいボールを使っている人ほど、振り子ではなく自分の筋力で保持している。

では、仮想的にでも振り子投球を実現させるためには、どうすれば良いのだろうか。

これは、科学的、生物学的に折衷案を採用するしかない。生物学的に身体が壊れない範囲でバックスイングを高くし、ボールを重くするしかない。だが、ここで「振り子の周期」が大きく影響しはじめる。

振り子の周期

先述しているが、もう一度確認しよう。

振り子には「周期」がある。振り子が一往復する時間のことを指す。
・おもりの重さや手を放す高さは、周期とは無関係である

本物の振り子であれば、振り子の長さを変えることができるが、投球者の腕の長さは変えられない。つまり、重さと高さに無関係で周期(一往復の時間)が一定であるということは、周期はリリースタイミングに影響を与えるのである。

バックスイングを高くすることは、振り子の移動距離が長くなるということである。しかし、周期(時間)が変化しないため、振り子はより速く移動しなければ成立しない。つまり、振り子の速度が大きくなる(振り子投球の腕のスピードが速くなる)ことを示す。

当然、腕の振りが速くなれば、リリースタイミングはよりシビアになる。そして、バックスイングが高いのに、腕の振りが速くなっていない投球は、残念ながら振り子投球ではないという結論に至る。

まとめ:振り子の科学と振り子の生物学【学術的分析】

バックスイングが高いことや重たいボールを使って投球することが、別に悪いわけではない。頭の位置よりも高いバックスイングから繰り出される投球が、爽快なストライクとなるのは、見ている人たちを強く魅了するだろう。

ただそれは、振り子理論を用いた理想の振り子投球ではないというだけだ。そもそも投球を簡単な理論で片付けようとすることが、よくないのではなかろうか。

もちろん、振り子の科学も振り子の生物学も、投球者に合わせて適切に理論部分ごとに取り入れれば、良い結果に結びつくだろう。

ひとまず私には、地道なトレーニングと練習に勝る上達方法は、今のところなさそうである。

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満稀(みつき)
満稀(みつき)
全くボウリングに向いていない運営者
ボウリングに向いている部分は、なにひとつありません。なにひとつ向いていないからこそ、ひとつひとつに対して、ボウリングについて真剣に考えます。
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